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COLUMN家族信託とは?

家族信託とは?土地活用・運用におけるメリットや手続き方法を解説

不動産を運用している場合、認知症や高次脳機能障害などを理由に判断能力が著しく低下すると、適切な管理ができなくなります。このようなトラブルは、家族信託によって家族に土地を運用する権限を与えておくことで対策できます。

本記事では、家族信託を土地活用・運用に利用するメリットや手続き方法などについて詳しく解説します。

家族信託とは

家族信託は、お金や財産を管理する方法の1つです。自分の貯金や不動産、株式などの財産を信頼できる家族に頼んで管理してもらいます。その際は、将来の介護費用や老後の生活費など、財産を使う目的について定めておくことも可能です。

本人の意思に基づいて家族が運用するため、望まない形で財産を使い込まれてしまう心配がありません。

家族信託の仕組み

これまでは、財産の承継方法として、「生きているうちに贈与する」か「亡くなった後に相続する」かの2つしか方法がありませんでした。そこで登場したのが「家族信託」です。

信頼できる家族や親戚に財産を託し、費用を抑えつつ柔軟な財産管理と資産の承継を実現できます。家族信託に関わる人と関係性について詳しく見ていきましょう。

委託者

委託者とは、財産管理を頼む人のことです。財産の管理や処分の方法を事前に決定する権限を持つだけではなく、受託者の選任または解任する権利も持ちます。

受託者

受託者とは、委託者から財産の管理を頼まれる人のことです。受託者は財産管理に関する多くの権利を持っていますが、善管注意義務、忠実義務、分別管理義務などの義務も負います。これらの義務を果たすことで、委託者の財産が適切に管理・運用されます。

受益者

受益者とは、財産管理によって生じる利益を受け取る人のことです。通常、委託者自身が受益者ですが、家族を受益者として指定することも可能です。例えば、自身の財産の運用によって得た利益を孫に受け取ってもらうこともできます。

家族信託が注目されている理由

家族信託は、判断能力が低下した後でも本人の意思のとおりに財産の運用・活用が可能になる仕組みです。なぜ、家族信託が注目されているのか、詳しく見ていきましょう。

認知症の人が増えている

日本は超高齢化社会へと進むことから、認知症の人が増えるのはほぼ間違いありません。ここで注目すべきは、人数ではなく割合です。

内閣府の「平成28年版高齢社会白書(概要版)」によると、2012年の認知症患者数は462万人で、65歳以上の高齢者の7人に1人の割合でした。これが2025年には約700万人となり、5人に1人にまで増えることが見込まれています。

このように、自身も認知症になる可能性が高まっていると考えられるため、家族信託によって不動産の適切な運用・活用を家族に託すことを検討する方が増えているのです。

もし、認知症によって判断能力が低下した場合、家族が本人の代わりに不動産を売却することはできません。これは、本人の利益を守るために定められたルールです。たとえ、本人にとって不動産の売却にメリットがあるケースにおいても例外ではありません。また、売却だけではなく修繕や賃貸として運用するなど、不動産に関わる一切の行為が認められないため、さまざまな問題が起きる恐れがあります。

出典:「平成28年版高齢社会白書(概要版)」

成年後見制度よりも本人の意思を反映しやすい

成年後見制度には、いくつかの制約が存在します。まず、毎年の家庭裁判所への報告義務が負担となることがあります。また、資産の積極的な活用や生前贈与、相続税対策を行うのが難しいため、不動産のように活用によって利益を得られる財産については、成年後見制度の利用は向いていません。

一方、家族信託は本人の意思を反映しやすく、元気なうちから資産の管理・処分を家族に託すことができます。そして、本人が判断能力を喪失した後も、本人の意向に沿った財産管理・活用の円滑な遂行が可能です。

家族信託のメリット

家族信託は、判断能力が低下した後でも本人の意思のとおりに財産の運用・活用が可能になる仕組みです。なぜ、家族信託が注目されているのか、詳しく見ていきましょう。

2次相続が可能

通常の遺言では、2次相続以降の資産承継先は指定できません。

家族信託を活用すれば、2次相続以降の資産承継者を指定することが可能です。そもそも2次相続とは、財産を相続した人が亡くなることで、さらに相続が発生することです。例えば、子が財産を相続し、子が亡くなった後は孫が相続するケースがあります。

家族信託では、受益者が亡くなった後に受益者になる人物を指定できます。2次相続以降の指定について例を見ていきましょう。

第1受益者: 親(財産を管理・受益する最初の受益者)
第2受益者: 子(親が亡くなった場合、子が受益者となる)
第3受益者: 孫(子供が亡くなった場合、孫が受益者となる)

不動産の共有にまつわる紛争を防止できる

共有不動産は、共有者全員が協力しないと処分できません。将来、共有名義の不動産を処分したくても、すべての名義人の承諾が必要です。

そのため、意見の相違によって紛争が起きるケースが少なくありません。このような問題を未然に防ぐ手段として家族信託が役立ちます。

家族信託を活用することで、共有者の権利と相続分の財産的価値を平等に保つことができます。同時に、不動産の管理処分権限を家族信託の管理者に集約できるため、不動産を活用したくても共有者の同意を得られなくて活用できないといった事態を防げます。

税金対策もできる

家族信託において、受託者と受益者を子供に設定できます。そのため、子供が不動産による収入を得ることが可能となります。

子供の収入が増加することで貯金がしやすくなったり、相続税や固定資産税の負担が減少したりすることが期待できます。

家族信託のデメリット

家族信託は、万能な制度ではありません。メリットだけではなくデメリットを理解したうえで、ご自身に適しているかどうかを判断することが大切です。家族信託のデメリットについて詳しく見ていきましょう。

損失を他の所得と通算できない

不動産運用において損失が出た際は、他の所得と通算することで税負担を軽減できます。しかし、家族信託においては損失が発生した場合でも他の所得と通算できないため、収支に対して税負担が大きくなる可能性があります。

収益によっては年1回の届出が必要

家族信託によって運用している財産によって生じた収益が3万円を超える場合、翌年の1月31日までに税務署に届出が必要です。

通常は受託者が信託計算書と合計表の2つの書類を税務署に提出します。ただし、委託者と受益者が親の場合は、親の名前で受託者が行います。

受託者の合意が必要

家族信託を行うには、受託者の合意が必要です。自身が委託者と受益者を兼任するとしても、財産の管理・運用を行う受託者がいなければ家族信託はできません。

受託者の合意を得られない場合は家族信託ができないため、メリットや目的などを十分に伝え、話し合ったうえで合意を得ることが大切です。

相談できる専門家が少ない

家族信託は比較的新しい制度であるため、専門家の数が限られていることがデメリットとして挙げられます。家族信託を行うために税理士や弁護士、知識を有した専門家などのサポートは必須と考えましょう。法律上、届出は自分たちだけで行えますが、書類の記載ミスやさまざまルールに関して不備が起きるリスクがあります。

家族信託を検討する場合、信頼性の高い専門家を見つけるために、複数の専門家と面談し比較検討を行うことが重要です。家族信託に関する知識や経験を確認し、安心して任せられる専門家を見つけましょう。

家族信託を検討するケース

ここまで解説した内容を踏まえ、家族信託をどのような場合に検討した方がよいのか詳しく見ていきましょう。

意思能力の低下や介護における対策が必要な場合

家族信託は、自身や家族の意思能力が低下した後でも、資産の管理や処分、介護に必要な費用を家族が継続して行えるようにします。これにより、資産が効果的に管理され、介護に必要な資金を確保できます。また、不動産の購入や売却などの資産承継対策もスムーズに実行できます。

不動産の共有に関する問題がある

家族信託は、共有名義の不動産によって起きるトラブルを未然に防ぐために役立ちます。共有者の権限と財産的価値を平等に保ちつつ、管理処分権限を特定の共有者に集約させることで、不動産が塩漬け状態になるのを防げます。

成年後見制度の利用のハードルが高いと感じる

成年後見制度は、意思能力が低下した後に財産管理や日常生活のサポートを受けるための法的手段です。しかし、成年後見制度を利用するにはいくつかのハードルや課題が存在します。例えば、成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所への申し立てや文書の作成が必要です。手続きは複雑なため、大きな負担に感じることもあるでしょう。

一方、家族信託は成年後見制度のような煩雑な手続きは不要です。

二次相続以降の資産承継を考えている

家族信託には「家族」という言葉が入っており、実際に家族に託すケースがほとんどです。しかし、実際には知人や友人、弁護士といった第三者との信託契約を交わすこともできます。

そのため、資産を遺す子供がいない場合、資産を友人や慈善団体などに引き継ぐことも可能です。また、障がいを持つ子供がいる場合、その子供が将来的に自立できない可能性を考慮し、必要なサポートや生活に必要な費用を確保するために、受益者に設定するケースもあります。

また、子供が亡くなった後は、慈善団体や障害者施設などに資産を託すこともできます。

家族信託の手続きの流れ

家族信託の手続きはシンプルなものの、法律上のルールに従って契約書を作成し、適切な方法で関係機関に提出する必要があります。そのため、専門家のサポートを受けることが一般的です。家族信託の手続きの流れについて詳しく見ていきましょう。

1.家族信託の目的を明確にする

家族信託の手続きを始める前に、まず家族信託の目的を明確にしましょう。体力的な問題、認知症対策、相続対策、介護費用の捻出など、さまざまな目的が考えられます。目的を定めないまま次のステップに進むと、適切な信託契約を締結することができません。例えば、不動産管理・運用を目的とする場合は、受益者を自身に設定して将来の老後や介護費用を捻出する方法があります。

また、子供を受益者とすることで、相続不動産にかかる税金の支払いに充てるようにもできます。

2.信託契約書の作成をする

家族信託の際は、信託契約書の作成が必要です。信託契約書の内容に従って財産の管理・運用を行うため、必要な事項はすべて盛り込みましょう。漏れがあるとトラブルにつながるため、家族信託の知識がある専門家のサポートを受けることが大切です。

信託契約書には、以下のような事項を定めます。

・委託者
・受託者
・受益者
・信託財産
・信託の期間
・信託の目的

また、信託用口座の作成の際に、銀行に公正証書の信託契約書の提出を求められる場合があります。公正証書は公証人によって作成される証拠能力が高いものです。そのため、契約の内容や署名が争点となる紛争が起きた際に、不当な結果になるのを防ぐことにつながります。

3.信託登記・信託用口座の作成

信託契約書の作成後に信託財産を移転し、信託を登記します。登記をもって、財産を託したことが法的に成立するため、必ず行いましょう。

また、家族信託の受託者は、信託財産を適切に管理するために信託口座を開設する必要があります。この口座は信託財産の預け先であり、受託者が資産を管理・運用し、目的に応じて必要な支出を行うために欠かせません。

家族信託にかかる費用

家族信託の利用そのものに費用はかかりませんが、公正証書の作成費用や専門家に支払う報酬などが発生するのが一般的です。家族信託にかかる費用について詳しく見ていきましょう。

公正証書の費用

家族信託の信託契約書を公正証書として作成する場合は、財産の評価額に応じて1~5万円程度の手数料が発生します。公正証書は信託口座の作成時に求められるとは限りませんが、紛争の防止につながるため、なるべく作成することが大切です。

不動産を信託する場合の費用

登録免許税として、固定資産税評価額の1,000分の4(土地信託の場合は1,000分の3)にあたる額を支払う必要があります。

コンサルタント報酬

信託契約を締結する際に外部のコンサルティングサービスを利用する場合、コンサルティング費用が発生します。一般的な相場は、信託財産が1億円以下の部分については1%、それ以上の部分については0.5%です。

信託監督人や受益者代理人に支払う報酬

信託監督人は、信託契約で定められた内容に従った財産が管理・運用されているか監督する人です。また、受益者代理人は判断能力が低下した人、幼児といった適切な判断が難しい受益者の代わりに利益を受け取る人です。

これらを定める場合は、報酬を支払う必要があります。相場は月額1万円程度ですが、双方の合意をもって決定します。

まとめ家族信託とは?土地活用・運用におけるメリットや手続き方法を解説

家族信託は、本人の判断能力の低下に備えて事前に行っておく必要があります。もし、認知症になってしまえば、不動産を適切なタイミングで売却できなくなったり、適切な運用に支障をきたしたりして、経済的な損失を受けることになりかねません。

このような事態を防ぐためにも、事前に家族信託について話し合い、信託契約書の作成および信託財産の移転などを行っておくことが大切です。

コラムニスト川口 晃司

前職は新潟県の独立リーグのチームでマネージャーをしていました。
私生活では子供と遊ぶこと、野球とサッカーを観ることが日々の楽しみです!

地域の皆さまに信頼していただけるように毎日の業務に取り組んでいます。

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