家づくりコラム
- 断熱
寒暖差によるヒートショックに注意!原因や家づくりのポイントを解説
寒い季節に心配される健康リスクのひとつが「ヒートショック」です。暖かいリビングから冷えた脱衣所や浴室に移動した瞬間、急激な温度差が身体に負担をかけ、血圧が大きく変動。心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる重篤な症状を引き起こすことがあります。
実際、日本では年間1万人以上がヒートショックによって命を落としているとされ、交通事故よりも多いとも言われています。
特に高齢者や持病のある方がいるご家庭では、家の中だからといって油断できません。
この記事では、ヒートショックの原因やリスクが高い人の特徴、防ぐための住まいの工夫まで詳しく解説します。
- 目次
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ヒートショックとは
ヒートショックの主な原因は「強い寒暖差」
ヒートショックになりやすい人
ヒートショックの現状
ヒートショックの対策
ヒートショック対策のカギは「温度差を10℃以上に保つ家づくり」
まとめ
ヒートショックとは
ヒートショックとは、急激な温度差によって血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中などの重大な健康被害を引き起こす現象です。特に、寒い脱衣所やトイレから暖かいお風呂場に移動した際などに発生しやすく、日本では毎年1万人以上がヒートショックにより亡くなっているともいわれています。
交通事故死よりも多いとも指摘されており、高齢者のいる家庭では特に注意が必要です。
ヒートショックの主な原因は「強い寒暖差」
住宅の中でヒートショックが発生する最大の原因は、暖房の有無によって生じる強い寒暖差にあります。暖かく保たれているリビングから、暖房の効いていない脱衣所や廊下、トイレなどへ移動した際に、急激な温度の変化が体に負担をかけ、血圧の乱高下を引き起こします。
とくに冬場は、これらの非暖房空間の室温が10℃以下になることも多く、ほんの短い移動だけでも身体へのストレスが大きくなります。
一般的な分譲住宅では、居室には一定の断熱対策が施されていても、脱衣所やトイレなどには十分な断熱施工がされていないケースも多く見受けられます。
そのため、室内であっても場所によって大きな温度差が生まれやすく、暖かい空間から寒い空間へ移動するたびに体温が奪われ、血管が急激に収縮します。こうした負荷の繰り返しが、心筋梗塞や脳卒中といった重大な疾患につながる可能性を高めてしまうのです。
ヒートショックになりやすい人
ヒートショックは誰にでも起こり得る現象ですが、特に注意が必要なのは、年齢や持病、生活習慣、住宅環境にリスク要因を抱えている方です。
ヒートショックのリスクが高いとされる方の特徴を詳しく解説します。
年齢や基礎疾患による影響
加齢とともに、血管の柔軟性は失われ、血圧の調節機能も低下していきます。そのため、65歳以上の高齢者は、気温の急激な変化によって体がダメージを受けやすくなります。特に高血圧や糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病を抱えている場合には、血管や心臓に過剰な負担がかかり、温度差によるショック症状を引き起こすリスクが高まります。
日常の習慣がリスクを高めることも
入浴の習慣も、ヒートショックのリスクに大きく影響します。熱めのお風呂を好んだり、一番風呂に入るのが習慣になっていたりする場合、急激な温度変化にさらされやすくなります。また、飲酒後にお風呂に入ることが多い人や、30分以上長風呂をすることが習慣になっている人も、意識障害や脱水症状を引き起こす可能性が高く、事故につながる危険があります。
住宅環境の影響にも注意が必要
身体の状態や行動だけでなく、住まいの温熱環境もヒートショックの発生に関わります。とくに、断熱性が低く、浴室や脱衣所に暖房設備がない住宅では、冬場の室温が大きく下がり、入浴時にリビングとの温度差が10℃以上になることもあります。
ヒートショックは温度差が10℃以上で起きやすいとされているため、それを踏まえた対策が必要です。
ヒートショックの現状
厚生労働省が公表した令和3年の人口動態調査によると、65歳以上の方が浴槽内で不慮の溺死や溺水に至った件数は5,097人にのぼり、そのうち4,750人が自宅など居住施設内での事故でした。
これは同年の交通事故による死亡者数(2,150人)をはるかに上回る数字です。また、東京消防庁のデータによれば、こうした溺水事故の多くは冬場に集中しており、気温の低下が直接的なリスク要因であることがわかります。
入浴中の心停止事故は、浴槽内で溺れてしまうケースだけでなく、体温変化によって誘発される心臓や脳の疾患が原因となって発生することも多く見られます。特に冬季は、そうした病気による心停止の発生件数が夏季の約10倍にものぼるという報告もあり、住宅内の温熱環境がいかに命に関わるかが浮き彫りになりました。
暖房が効いているかどうかだけでなく、住宅全体の断熱性能を高め、空間ごとの温度差をいかに抑えるかが、今後の家づくりにおいて重要なテーマです。
ヒートショックの対策
ヒートショックを防ぐには、温度差を抑える工夫や、入浴のタイミング、身体の状態に応じた行動が重要です。住まいの環境を整えるだけでなく、入浴前後の過ごし方や入浴中の安全対策を意識することで、事故のリスクを大きく下げることができます。
暮らしの中で実践できるヒートショックの対策について紹介します。
入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく
ヒートショックを防ぐためには、入浴時の温度差をできる限り小さくすることが重要です。特に、リビングなどと比べて冷え込みやすい脱衣所や浴室は、暖房器具などを使って事前にしっかりと暖めておくことが効果的です。
窓まわりは外気の影響を受けやすく、冷気が侵入しやすい場所でもあるため、内窓を設置することで断熱性を高め、暖房効果を持続させやすくなります。
また、浴槽にお湯を張る際には、高い位置からシャワーで給湯することで浴室内に蒸気が広がり、効率的に空間全体が暖まります。自動給湯機能を使っている場合でも、最後の数分だけシャワーでお湯を足すことで、冷えた空間を一気に温めることができます。
お湯の温度は41℃以下・入浴時間は10分を目安に
入浴時のお湯の温度にも注意が必要です。体温よりもかなり高い温度に長時間浸かっていると、体温が急上昇し、意識を失ったり、浴槽内で身動きが取れなくなってしまう危険性があります。
一般的に、41℃以下のややぬるめのお湯に10分程度浸かることが身体にとっても負担が少なく、心臓や血圧への影響も抑えられるとされています。熱いお湯に入りたいという気持ちはあっても、高温浴はヒートショックや脱水、ショックによる心停止など、深刻な事故を引き起こすリスクがあります。
半身浴であっても、長時間の入浴は体温を過剰に上げてしまうため、時間管理も意識したいところです。
食事直後や飲酒後の入浴は避ける
血圧が不安定になる時間帯に入浴することは非常に危険です。とくに、食後すぐや飲酒をした後、または睡眠薬などの服用後は、血圧が低下しやすく、身体の反応も鈍くなっています。こうした状態で入浴を行うと、意識障害を起こしてしまい、溺れてしまう可能性もあります。
リラックスのつもりで入ったお風呂が、重大な事故につながることもあるため、入浴のタイミングには十分注意しましょう。入浴は、身体のコンディションが安定しているときに行うのが理想です。
入浴は日没前
入浴時間を工夫することも、ヒートショック予防には有効です。気温が下がり始める日没後よりも、比較的暖かい午後の早い時間に入浴することで、脱衣所や浴室の冷え込みも軽減されます。さらに、人の体には1日の中で気温の変化に順応しやすい時間帯があり、午後2時から4時ごろがそのタイミングとされています。
この時間帯であれば、身体の機能も活発で、寒暖差に対する耐性も比較的高いとされているため、リスクを抑えた入浴が可能になります。
夕食前の時間を使って、余裕を持って入浴することを習慣づけましょう。
できるだけ1人での入浴を避ける
入浴中の事故は、発見が遅れることで命を落とすケースも少なくありません。そのため、できる限り家族のいる時間に入浴を行うことが望ましく、特に高齢者や持病を持っている方は、一人での入浴を避けることが推奨されます。
やむを得ず一人で入浴する場合でも、「今からお風呂に入るよ」と家族に声をかけておいたり、あらかじめ入浴のタイミングを伝えておくだけでも安心感が違います。こまめに様子を見に行くなど、周囲の見守りも重要な対策のひとつです。万が一に備えて、浴室の扉を外から開けられるタイプにするなど、設備面での工夫も検討しておきたいところです。
ヒートショック対策のカギは「温度差を10℃以上に保つ家づくり」
ヒートショックを予防するためには、家中どこにいても急激な温度変化がないよう、全室の温度差を10℃以上に保つことが理想です。
そのためには、単に暖房設備を追加するだけでなく、住宅自体の断熱性能・気密性能を根本から見直すことが重要です。
たとえば、高性能な断熱材や樹脂サッシの採用、気密性を高める施工によって、わずかな暖房で家全体が均一に温まり、寒暖差の少ない快適な空間が実現できます。
具体的な対策について詳しく見ていきましょう。
暖房の届かない空間も工夫する
廊下やトイレ、脱衣所など、暖房が設置されていない空間は冬になると冷え込むこともあり、ヒートショックのリスクが高まります。こうした場所にも局所的な暖房器具を導入することで、一定の温度を保ちやすくなります。
たとえば、人感センサー付きのセラミックファンヒーターを設置すれば、必要なときだけ自動で温めてくれるため、安全性と省エネを両立できます。
さらに効果的なのが、断熱性の改善です。窓には内窓を後付けすることで、冷気の侵入を抑える「空気層」が生まれ、体感温度が大きく変わります。
浴室には断熱パネル付きのシステムバス、トイレには床下断熱材や断熱便座を組み合わせることで、局所的な温熱環境の質が格段に向上します。
簡易リフォームで断熱強化する
今ある住宅でも、内窓の設置や断熱玄関ドアへの交換といった簡易なリフォームで性能向上が図れます。 内窓の設置により、室内に空気層ができるため、断熱・防音・結露対策にも効果を発揮します。 これらの工事は比較的短時間で完了し、費用対効果の高い選択肢です。
浴室の安全性を見直す
浴室でのヒートショック事故を防ぐためには、入浴前の暖気対策だけでなく、設備そのものの安全性も見直しましょう。たとえば、洗い場で倒れた際でも開放できるように、扉は脱衣所側から取り外せるタイプがおすすめです。
断熱性能に優れた家を建てる
ヒートショックを予防するには、室内の温度差を最小限に抑える工夫が欠かせません。なかでも根本的な対策として重要なのが、住まいそのものの断熱性能を高めることです。
寒い季節、暖かいリビングから冷え込んだ脱衣所や浴室に移動する際の急激な温度変化が、体に大きな負担を与えるため、家全体の温度を一定に保てる断熱性の高い住まいが求められます。
広島の注文住宅会社である日興ホームでは、こうした温熱環境の重要性に着目し、「夏は涼しく冬は暖かい」住まいの実現を目指した断熱性能の高い家づくりを行っています。
断熱とは、外気の熱を家の中に伝えないこと、そして室内の熱を外へ逃がさないことです。この両方を満たすことで、冷暖房に頼りすぎず、年中快適な暮らしが可能になります。
日興ホームでは、断熱材の選定や厚みによる「熱抵抗値」の計算をもとに、地域の気候に合った適切な断熱性能等級を確保しています。
また、薪ストーブを活用した「FREEQ HOMES(フリーク・ホームズ)」のように、自然エネルギーを取り入れた家づくりも可能です。
まとめ
ヒートショックは、家の中の寒暖差という見落としがちな要因から発生し、命にかかわる深刻な事故につながることもあります。特に高齢者や基礎疾患を持つ方にとっては、日常的な入浴すら危険を伴うものになりかねません。こうしたリスクを防ぐには、部分的な対策だけでなく、家全体の断熱性・気密性を高めることが重要です。
広島で快適性と省エネ性を両立した家づくりを実現したい方は、「日興ホーム」へご相談ください。
コラムニスト:「家づくりの相談窓口」eLOHA(イロハ) 八塚年哉
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家づくりで深まった絆を大切にしてこれからの新生活を楽しんで、幸せで暖かい思い出をたくさん作っていただきたいと思っています。
皆様の心の中から取り出した、暮らしに対する想いがたくさん詰まった家づくりになりますように・・・・趣味:家づくり
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ここはマイホームの「新しい暮らし方」を教えてくれる場所。玄関から奥の和室まで続く長い土間、隣接した開放感のあるテラス、家族が集えるリビング・ダイニング。各方面の専門家が家で過ごす時間と真剣に向き合ってできたモデルハウスです。部屋の大きさ・天井の高さを実際のスケールに設定していますので、ぜひ等身大の家づくりをご体感ください。