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東広島の「寒暖差」を心地よさに変える家づくり

具体的なパッシブデザイン住宅設計ガイド

東広島市は、広島県内でも内陸部に位置し、沿岸部と比較して朝晩の気温変化(日較差)や年間を通した寒暖差が大きいという気候特性を持っています。
このような地域で、2026年以降のスタンダードとなる「GX志向型住宅」を実現するには、機械だけに頼らず、自然のエネルギーを賢く利用するパッシブデザインが極めて有効です。
とかく、間取りや標準仕様、価格ばかりに目が行きがちですが、本当に大切なのは、家を建ててからの住み心地だと思います。いくら間取りが良くても住み心地が悪いと後悔してしまいますよね。

今回は、東広島の気候に適した具体的な設計手法を解説します。
専門的な内容ですので、あくまで参考にし、詳細は設計士さんと相談しながら家づくりに取り組んでください。

 

 

 

1. 設計の優先順位:まずは「建築の工夫」から

心地よくエコな暮らしを実現するには、対策の順番が重要です。
太陽光パネルなどの「創エネ」を考える前に、以下の順序で計画を進めるのがパッシブデザインの鉄則です。

1. 建築の工夫(断熱・気密・日射熱制御)と暮らし方: 自然の恵み(太陽・風)を活かす設計。
2. 設備の工夫: 高効率なエアコンや給湯器の選択。
3. 創エネの工夫: 太陽光発電などの導入。 ※ 太陽光パネル(創エネ)を載せる前に、まず建築と暮らし方でエネルギーを最小化するのがパッシブデザインの基本です。

 

具体的な設計手法

分析1:暮らしを読み解く「環境家計簿」
設計の初期段階で、住まい手の実際の暮らしを客観的に把握します。

✅ 環境家計簿の活用: 現在の光熱費(電気・ガス・灯油の使用量)を標準値と比較することで、「給湯が多い」「暖房に頼りすぎている」といった各家庭特有のエネルギー消費傾向を分析できます。

✅ 体感温度の把握: 温湿度計だけでなく、放射温度計(表面温度計)を用いて**「体感温度=(室温+放射温度)÷2」**を実測し、住まい手が心地よいと感じる温度域を探ります。



図:環境家計簿の標準値(6地域)

 

分析2:敷地のポテンシャルを読み解く
設計前にその土地特有の「恵み」と「不快要素」を整理します。

✅ 気象データの取得: 建築設計用気象データ等を用いて、その住所ピンポイントの気温・日照・風・降水量を把握します。

✅ 敷地調査の予習: 航空写真やストリートビューで隣家の窓の位置、電柱、周辺の抜け感、日当たりを予測し、分析図にまとめます。


✅ 現地確認: 「視線の抜け」や「緑の連続感」などのポジティブ要素を探し、騒音・臭い・視線などのネガティブ要素は設計の工夫(窓の配置等)でブロックします。

図:環境分析の参考URL集

 

 

2. 冬の戦略:太陽の熱を「貯金」する

冬の寒さが厳しい東広島では、太陽光をいかに室内に取り込み、逃がさないかが鍵となります。

✅ 南面の窓を「優等生」にする:南面は冬に最も多い日射(600W/㎡)が得られる方位です。
南側に大きな窓を配置し、冬の暖かな日差しを室内に採り入れることで、暖房エネルギーを大幅に削減できます。

✅ 断熱等級6以上を標準に:取り込んだ熱を逃がさないよう、理想は、断熱等級6(UA値0.46相当)以上の保温性能を確保しましょう。
これにより、冬の無暖房時でも室温が13℃程度に保たれ、快適性が向上します。

✅ 気密性能(C値1.0以下):隙間風を防ぎ、計画換気を成立させるために不可欠です。

 

 

 

3. 夏の戦略:日差しを「遮り」、風を「導く」

盆地特有の暑さ対策には、日射の遮蔽と通風の確保が重要です。

✅ 庇(ひさし)と軒の設計:南面の窓には、「開口部高さの1/3」程度の出寸法を持つ庇を設けます。
これにより、高い位置から降り注ぐ夏の日差しをカットしつつ、低い位置からの冬の日差しは室内に採り入れることができます。

✅ 東西面の「外側」遮蔽:東西面は夏に非常に強い日差し(600W/㎡)を受けます。
庇だけでは防げないため、スタイルシェードや外付けブラインド、すだれなどを用いて、窓の外側で熱を遮断するのが最も効果的です。

✅ 風の通り道を作る:風を通すには「入口」と「出口」のセットが必要です。
冷やしたい場所を風上に配置し、庭の緑化で「クールスポット」を作ることで、室内に涼しい風を導きます。

 

 

 

4. 正確な分析とシミュレーション

パッシブデザインは、その土地のポテンシャルを読み解くことから始まります。

✅ 気象データの活用:建築研究所の「建築設計用気象データ」などを用い、東広島ピンポイントの気温・日照・風向を確認します。

✅ 熱収支による窓の選定:窓は熱の出入りが最も激しい部位です。
サッシメーカーの「省エネ住宅シミュレーション」などを活用し、冬の熱取得と夏の熱損失のバランス(熱収支)を数値で確認しながら仕様を決定することが推奨されます。

図:ピンポイントで確認できる気象データ(建築研究所)

 

 

 

まとめ

東広島の厳しい寒暖差を乗り切り、小さいエネルギーで心地よく暮らすためには、地域特性に根ざしたパッシブデザインが不可欠です。
この手法は、住まう人の健康を守るだけでなく、光熱費の削減や将来の資産価値維持にも直結します。

参考資料・URL
• 辻 充孝 教授(岐阜県立森林文化アカデミー)著 『ぜんぶ絵でわかるエコハウス』
• 建築設計用気象データ(建築研究所):ピンポイントの気象分析ツール
• 自立循環型住宅 気象データ:風向・風速データの確認
 http://www.jjj-design.org/
• 気象庁HP 気象統計情報:過去の気象データの確認
 https://www.jma.go.jp/jma/index.html

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