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建築探訪:県立広島大学図書館(広島市南区)
建築探訪:県立広島大学図書館(広島市南区)
―円形の知のシンボル、鼓のような図書館―
広島市南区宇品東。幹線道路沿いを歩いていると、やわらかい曲線を描いた不思議な建物が現れます。
それが「県立広島大学図書館」。
設計は 石本建築事務所、竣工は1997年。
建築面積1,500㎡あまり、延床約3,333㎡。
構造は鉄筋コンクリートと鉄骨の混構造で、地上4階建て。
ひろしま街づくりデザイン賞受賞
株式会社エクスナレッジ「日本の最も美しい図書館 改訂版」が発刊され、日本全国の”一度は訪れてみたい!”図書館41のうちの1つとして、県立広島大学(広島キャンパス)の図書館が紹介されました。
外観デザイン ― 丸い図書館の存在感
この建物の第一印象は、やはり「円形のフォルム」。
鼓(つづみ)のような形をした外観が、周囲の直線的な建物群の中でひときわ目を引きます。
実はこの円形デザイン、単なる造形的な遊びではなく、限られた敷地を有効活用するために選ばれたプランだそう。
外壁には構造体そのものをデザインとして“見せた”ブレース構造が現れ、建築としての力強さを感じさせます。
この外観だけでも、訪れる価値があります。
施工技術の高さがうかがえる一見の価値がある建物だと感じました。
アクセスと立地
アクセスは、広電「県病院前」電停から徒歩約7分。
または、広電バス12号線「県立広島大学前」バス停から徒歩1分という好立地です。
周囲は港湾エリアに近く、少し歩けば宇品港や広島みなと公園にも出られます。
海風を感じながらの建築探訪にはぴったりのロケーションです。
内部空間 ― 吹き抜けのある“知のアトリウム”
エントランスを抜けると、柔らかな光が降り注ぐ吹き抜け空間が広がります。
階段を上るたびに視界が開け、2階から4階にかけて書架と閲覧席が円を描くように配置されています。
吹き抜けを囲むように伸びる動線は、まるで建物の内側を“回遊する”ような感覚。
壁際のPCユニットが構造を支えつつ、内側には木調の温かみが感じられ、
「構造」と「やすらぎ」が美しく共存しています。
静寂の中に響く紙の音、窓から差し込むやわらかな光。
“読書する建築”という言葉がぴったりの空間です。
建築の見どころ
外装ブレース(PCユニット構造)
各階に30個ずつ、計90個ものプレキャストコンクリートユニットを組み合わせて外壁を構成。
構造体を「隠さず、魅せる」発想が秀逸です。
円形プランの回遊性
書架を中心に歩くことで、自然と館内を一周できるような動線設計。
“図書館の迷路感”を感じさせつつも、視界が開けていて心地よい。
吹き抜けと階段の演出
吹き抜けを見上げると、上階の閲覧スペースが浮かぶように見えます。
建築の中に「知の塔」が立ち上がっているような印象です。
見学のポイント
一般の方も、大学受付で相談すれば見学可能(※要マナー配慮)
●外観は道路沿いからの撮影がベスト。特に午後は逆光になりにくく、曲線が美しく写ります。
●吹き抜けや階段部分では、少し立ち止まって“光の入り方”を観察するのがおすすめ。
●図書館内は学生が多く利用しているため、静かな観察を心がけましょう。
まとめ ― 構造と静けさが共鳴する空間
県立広島大学図書館は、構造的な美しさと、学びの静寂が共存した名建築です。
円形のフォルム、外部に現れた構造体、吹き抜けの立体感。
それらすべてが「学びを包み込む器」として完成されています。
広島市南区を訪れた際には、建築ファンなら一度は立ち寄ってほしい一棟です。
外観だけでなく、内部空間を体感すると、この建物の真価が見えてきます。