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広島・若草町医療ビルプロジェクト — 広島から発信する大規模木造建築

広島・若草町医療ビルプロジェクト — 広島から発信する大規模木造建築

広島駅北側、にぎわう大通りに面して完成した「若草町医療ビルプロジェクト」は、西日本で注目を集める純木造の5階建て医療ビルです。本文ではプロジェクトの位置づけ、設計と構造の特徴、建材と防耐火性能、設計に参画した(株)シェルターの役割と設計した“シェルター(=構造・木構造体供給)”について、施主・設計者・施工者の観点も織り交ぜて詳しく紹介します。
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最後に、広島の木造建築に新たな可能性を——と題して、日興ホームグループ広島支社KItoNOKOのご紹介もします。

 

 

 

1. プロジェクトの概要 — なぜ“純木造”なのか

若草町医療ビルは、広島市東区若草町(JR広島駅 新幹線口から徒歩約5分)に立地する医療用途のビルで、**西日本初とされる“純木造(軸組工法)による5階建て”**を実現した点が最大の特徴です。木造を採用することで躯体を軽量化し、杭基礎を不要にするなど、都市部での合理的な工法としての意義も強調されています。国交省の補助事業にも採択され、先端的な木造技術のデモンストレーション的な側面もあります。
下岸建設株式会社|広島の分譲マンション・総合建設・不動産

 

2. 材料と防耐火性能 — 「COOL WOOD」を採用

このビルでは、木質耐火部材**「COOL WOOD」を主要な柱・梁・ブレースに採用しています。具体的な火耐性としては、柱・梁・ブレースは2時間耐火**、梁は1時間耐火といった仕様が掲示され(案内資料からの抜粋)、準防火地域でも“純木造”を可能にする工夫が施されています。木の見え方を意識して外観や連続開口部からブレースを見せるデザインになっており、「木の温もり」を感じられる病院空間をめざしています。
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3. 構造設計と(株)シェルターの役割 — 「シェルター」が担ったこと

構造設計・防耐火アドバイス・木構造体の供給を担ったのが(株)シェルターです。シェルターは木構造の防耐火技術に関するアドバイスや部材供給を行い、国内での木造高層化の技術的ハードルをクリアする役割を果たしました。実際の施工は下岸建設が設計・監理・施工を担当し、設計協力としてぽたデザイン・moa architectsも参画しています。プロジェクトでは、木造の利点(温熱・質感・軽さ)を残しつつ、都市部の防火規制を満たす設計が求められました。
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4. 設計上のポイント(医療ビルとしての配慮)

医療ビルとしての機能面でもいくつか工夫があります。以下は設計上の想定ポイント(公表資料や見学会の趣旨から読み取れる点)です。

フロアごとにクリニック区画を想定したフレキシブルな床計画(将来のテナント変更に対応)。

大通りに面する連続開口部で自然光を取り入れ、待合や診察室に落ち着いた木質空間を実現。

木の使用による内装の温かみを活かしつつ、衛生管理・消毒・メンテナンス性を確保するための仕上げ(木部は防火・防汚処理を前提)。

機械設備(空調・換気・排煙)の配管やダクト経路は木躯体と干渉しないよう詳細に検討。

これらの点は、医療施設としての安全性・可変性・居心地の三要素をバランスさせるための配慮です。
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5. サステナビリティとコストの観点

木造を選ぶメリットとしては、炭素吸収(カーボンストレージ)効果、再生可能資源の活用、省資源な基礎工事(杭不要)による工期・コスト面の効率化が挙げられます。一方で、防耐火処理や維持管理、設備の取り合いなど工種間の調整は鋼・RCに比べて入念な設計管理が求められるため、設計段階での専門家協働が不可欠です。本PJはまさに、そうした“技術的チャレンジ”と“社会実装”を両立させた事例です。
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6. シェルターが設計した「シェルター(構造体)」について(技術的解説)

ここでいう「シェルター」は、会社名(株)シェルターが提供する木構造体と防耐火設計ノウハウを指します。主な技術的特徴は次の通りです。

プレカット・工場加工で精度の高い木部材を供給し、現場での組立精度を確保。

木質耐火部材(COOL WOOD)を用いることで、防火性能を数値的に担保。必要箇所には遅燃処理や被覆を施し、法定防火性能を満たす設計。

木のブレース(斜材)を構造体の一部として露出させることで、視覚的にも構造性能を見える化。

軽量化による基礎設計の最適化(杭不要など)でコスト・施工性の改善を図る。
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7. 現地見学会・技術普及の意味

プロジェクトは構造見学セミナーや完成見学会を通じて公開され、実務者や一般に向けた技術普及が行われています。こうしたオープンな情報共有は、木造高層化の社会受容性を高め、今後の医療施設や都市建築における木材活用の道を広げる効果が期待されます。
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8. 写真で見るポイント(見どころガイド)

外観:連続する開口部と木のブレースが顔を出す意匠。大通りに面して“木らしさ”をアピールしています。
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待合・内観:木の温もりが感じられる落ち着いた空間(仕上げ処理で衛生性確保)。

組立工程(構造見学):プレカット部材の精度と接合部の処理、防耐火被覆の納め方が学べます。
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9. 最後に — 広島から発信する「木の建築」の新潮流

若草町医療ビルプロジェクトは、都市部医療施設における木材利用の可能性を示した重要なケーススタディです。患者や医療従事者にとって心地よい空間を目指すと同時に、技術的には防火・構造・基礎設計の三者を巧みに調整することで“純木造5階建て”の実現が可能になったことは、今後の建築界にとって大きな示唆となるでしょう。関係者の技術公開や見学会は、同分野の横展開を促す貴重な機会です。
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広島の木造建築に新たな可能性を——

日興ホームグループ広島支社「KItoNOKO」

広島市西区・商工センターに誕生した日興ホームグループ広島支社「KItoNOKO(キトノコ)」は、都市部における木造大型建築の新たな可能性を示す拠点です。
鉄骨やRC(鉄筋コンクリート)が主流だった都市建築の常識を覆し、構造材として木を大胆に活かした中・大規模建築の実現に挑戦したこの建物は、環境への配慮と地域材活用の両立を果たした先進的なプロジェクトです。
建物全体には木の温もりが息づき、自然光が差し込む開放的な空間は、オフィスでありながらも居心地のよい「暮らすように働く」空間を演出。さらに、木造でありながら耐震性・耐久性を高水準で確保し、現代の都市建築に求められる機能性をも両立しています。

「KItoNOKO」は、木造建築が持つデザイン性・環境性・構造性能の可能性を広島から全国へと発信するランドマーク的存在です。
これからの都市型木造建築の未来を切り拓く拠点として、多くの建築関係者から注目を集めています。

 

参考・出典(主な情報源)

(株)シェルター「9/25-26 若草町医療ビルプロジェクト完成見学会」告知ページ。
shelter.inc

下岸建設(PDF案内):プロジェクト概要(西日本初の純木造5階建て等)。
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下岸建設 お知らせページ(見学会情報)。
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ADAN(業界団体)・林野庁系の告知転載(構造見学セミナー案内)。
日本建築設計学会|ADAN – 一般社団法人 日本建築設計学会のWebサイト。

 

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