Staff Blog

スタッフブログ

11

今一押しの建築部材「組子耐力壁」のご紹介

株式会社土佐組子(高知県)の「組子耐力壁」―伝統技術を構造化した“魅せる耐力壁”

今一押しの部材を紹介します!
和の美と構造性能を両立させた建材として注目を集める、土佐組子の「組子耐力壁(Kumiko Endurance Wall)」。
本記事では製品の背景、設計・材料・性能、導入事例、認定・受賞、設計上のポイント、施工・メンテナンスまで、現地情報と公表データを基に詳しく解説します。
伝統建築の改修を検討している設計者・工務店、意匠と耐震を両立したいオーナーに向けた実務的な内容も含めています。

 

 

製品コンセプト――組子細工を“耐力壁”に変えるアイディア

「組子耐力壁」は、細かな“組子”文様(伝統的な木格子)を単なる意匠に留めず、組むことで強度を発揮する組子の構造原理を拡大して耐力壁(地震時の水平力に抵抗する壁)として機能させた製品です。
通風・採光性を保ちつつ、内外観の“見える壁”として使える点が最大の特徴です。

株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

↑デザインの元になった、組子格子の欄間

 

開発の背景と共同研究

製品化のきっかけには、伝統建築の改修プロジェクト(宿毛まちのえき:林邸)や木質構造の専門家(例:木質構造研究者)との共同検討があり、伝統技術の理論化・力学解析を行った上で実用化されています。
伝統的な加工技術と現代の構造解析を掛け合わせることで、安全性と意匠性を両立させたという背景があります。

jcpp.jp

 

 

主な仕様・材料

樹種:高知県産ヒノキ(四万十ヒノキ等)を基本仕様とし、含水率管理(15%以下)を行っていると公表。

モジュール/タイプ:尺モジュール・メートルモジュールに対応。1G/2G相当のタイプや各種幅・高さの規格(例:W880〜1880mm、H2380〜3380mm、D115mm前後)でラインナップ。製品サイズは案件に合わせたオーダーにも対応。
株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

製造特長:釘を多用せず、ホゾ・溝加工などの組手加工で組立てる伝統的手法を構造部に応用。製法に関する特許出願や性能認証申請中の旨が明記されています。
株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

 

 

構造性能(試験データと実力)

土佐組子が公表している試験データ(社内試験レポートやパンフレット)では、**短期せん断耐力などの試験値が示され、実使用での壁倍率相当(報道や製品紹介では壁倍率7〜9倍相当の実力値が示唆されている例)**が紹介されています。
ただし「大臣認定(壁倍率の正式認定)」を取得済みという公開情報はなく、現時点では性能説明は自社試験・申請中の表記に基づくため、設計や構造計算で利用する際は必ず公的認定や詳細試験報告書を確認して下さい。

株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

ポイント(設計者向け)
自社試験では短期せん断耐力の平均・下限値が示されており、荷重-変形特性のグラフ等も公開されています。
施工条件や接合方法、周囲の軸組とのつながり次第で実効耐力が変わるので、現場ごとの構造検討が不可欠です。

株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

 

 

実際の採用事例と活用シーン

伝統建築の改修:欄間や修景を損なわず耐震補強を行いたい和風旅館や古民家の改修での採用例があり、保存地区での景観配慮にも適していることが紹介されています。
株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

新築・公共・商業:外周の“見せる壁”・間仕切り・ファサードなど、意匠性と構造性を同時に求める場面で採用が増えています(住宅のほか病院・店舗・公共施設の事例報告あり)。

 

 

認定・受賞(信頼性の一指標)

組子耐力壁は各種デザイン賞や業界賞で評価されています。代表例:
ウッドデザイン賞(2024 奨励賞)受賞。

グッドデザイン賞や各種選定・展示での紹介実績(Good Design 掲載など)。
公的な防災関連の登録(高知県防災関連登録製品)にも掲載されています。
これらは製品の設計思想・社会性の評価を示す指標です。

kochi-bosai.com

 

 

設計・施工上の注意点(実務的アドバイス)

構造計算:現時点で“壁倍率の全国的な大臣認定が取得済みかどうか”は各案件で確認が必要です。
設計では、メーカーの試験データを基に構造設計者が局所的な接合部や周囲の挙動を評価してください。

株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

接合・アンカー:見える意匠部材なので、仕口やアンカーの納め方を意匠と両立させる納まり検討が重要。
既存改修では既存壁との取り合いをきちんと決めること。

株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

含水率・環境管理:ヒノキの含水率管理(製品は15%以下で管理)や施工後の室内環境による木材の挙動(収縮・膨張)を考慮した目地や取り合い設計を行ってください。

 

 

メンテナンスと長期利用

木製格子であるため、塗装・表面保護、定期点検(割れ、組手の緩み、接合金物の腐食等)が必要です。
外部に用いる場合は湿気と直射日光への配慮、内部で使う場合でもエアコンや加湿による含水率変動を考慮した維持管理が推奨されます。
メーカーへの点検・補修相談が可能です。

株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

 

 

まとめ — どんなプロジェクトに向くか?

組子耐力壁は「意匠性を犠牲にせずに耐震性を付与したい」プロジェクトに最適です。特に:
伝統建築の保存・改修で「外観や欄間の風情を残しつつ耐震補強したい」場合。
kochi-bosai.com

新築で“見せる構造壁”として、和のデザインを現代建築に取り込みたい商業施設・住宅。
ただし、構造上の裏付け(公的認定や構造計算書)を設計段階で確認することが必須です。
自社試験で高い性能が示されている一方、実務で使うには「どのように現場納めし、周囲と力を伝えるか」を専門家で詰める必要があります。

株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

参考・問い合わせ
詳細スペックや施工相談、最新の試験報告書・認定状況は株式会社土佐組子の公式ページや製品パンフレットに掲載されています。
設計・導入を検討する際は、メーカーに直接問い合わせると最新の認定状況や納期・現場対応の情報が得られます。

株式会社 土佐組子 – 日本の「こころ」を「ステキ」に彩る

Blog Category

カテゴリー