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中村拓志(NAP建築設計事務所)─ 私の好きな建築家

中村拓志(NAP建築設計事務所)─ 私の好きな建築家

建築好きなら一度は目にしたことがあるであろう、独特の物語性と身体性を持つ作品群──中村拓志(NAP建築設計事務所)の仕事を、代表作と受賞歴を交えつつ「建築に対する考え方」をわかりやすく紹介します。

中村拓志(なかむらひろし)

 

1. 簡単な経歴・プロフィール

建築界の若手トップランナー中村拓志(なかむらひろし)氏
中村拓志(1974年生まれ)は、明治大学大学院修了後、隈研吾建築都市設計事務所での勤務を経て、2002年にNAP建築設計事務所を設立しました。街づくりから家具まで幅広い領域を手がけ、現在は明治大学の特別招聘教授も務めています。彼は、「微視的設計論」を提唱し「自然・身体・建築を有機的に結びつける」こと、地域の歴史や素材に根ざした「そこにしかない建築」を目指すことを設計の柱としています。

Hiroshi Nakamura & NAP|中村拓志&NAP建築設計事務所

 

 

2. 代表作(勝手にピックアップ)

リボンチャペル(Ribbon Chapel / 尾道・ベラビスタ)

2本の螺旋階段(リボン)が頂部で結び合わさる象徴的な礼拝堂。地形に立ち、道(経路)そのものを空間化することで「儀式の時間」を身体的に体験させる設計です。構造は緻密なエンジニアリングと結びつき、国際的にも高い評価を得ています。
Hiroshi Nakamura & NAP|中村拓志&NAP建築設計事務所

 

 

狭山の森礼拝堂(Sayama Forest Chapel)

森や地形、人々の動線に応答する小さな礼拝空間や住宅、商業空間まで、スケールを問わず「人の振る舞いに寄り添う」作品を多数手がけています。
Hiroshi Nakamura & NAP|中村拓志&NAP建築設計事務所

 

Optical Glass House(広島)

広島市中心部の住宅街に建つ都市住宅で、約6トンの光学ガラスブロックを積層したファサードが最大の特徴です。
Hiroshi Nakamura & NAP|中村拓志&NAP建築設計事務所

 

 Dancing Trees, Singing Birds(東京)

商業施設に組み込まれた小さな建築・ランドスケープの複合的プロジェクト。
「木々が踊り、鳥が歌うように」という名が象徴するように、人と自然の関係を優しく再構築する場です。
Hiroshi Nakamura & NAP|中村拓志&NAP建築設計事務所

 

葦垣の家(東京)

「葦垣の家」は、庭と建築が溶け合うように構成された住宅です。
敷地中央の築山を中心に“道行”のように巡る動線がつくられ、帰宅や移動といった生活の所作が豊かに演出されます。
外壁には葦垣や錆石が用いられ、光や風を柔らかく取り込みながら、落ち着いた素材感を生み出しています。
内外の空間が折り重なるように視線が広がり、時間の移ろいを感じられる住まいです。
Hiroshi Nakamura & NAP|中村拓志&NAP建築設計事務所

 

 

3. デザイン思想──「微視的設計(micro-scale design)」とは?

中村拓志氏は自身の設計をしばしば「微視的設計」と呼びます。これは大きな印象や造形だけで完結するのではなく、次のような細やかな観察と設計行為を重視する考え方です:

●人々の振る舞い・視線・歩行リズムを設計の出発点にする。
●地形や気候、地域の素材、歴史的記憶と建築の関係を丁寧に紡ぎ、場に根ざした個別性を引き出す。
●儀式性や時間の流れ(例:チャペルでの上る道)を建築自体でつくり出すことで、空間が「行為」を導くようにする。
結果として、作品は視覚的な象徴性と、身体で感じる空間経験の両方を持ち合わせます。著作『微視的設計論』などでもこの考え方が論じられています。
Hiroshi Nakamura & NAP|中村拓志&NAP建築設計事務所

 

 

4. 受賞歴(概観)

中村拓志/NAPは国内外で多数の賞を受賞しています。主なものを挙げると:

日本建築学会賞(作品)──(上勝ゼロ・ウェイストセンター等)。
日本建築家協会(JIA)関連賞(優秀建築賞、環境建築賞など)。
LEAF Awards(Overall Winner, 2015)・ARCASIA Awards(Building of the Year)・WAN Sustainable Buildings of the Year 等の国際賞。
GOOD DESIGN AWARD(金賞)やJCDデザイン賞などのデザイン系主要賞。
ウィキペディア

これらの受賞は、構造・素材・地域性・サステナビリティなど多面的に評価されている証左です。

 

 

5. 著書・メディア出演

代表的な著作に『微視的設計論』(INAX出版)、『恋する建築』(アスキー)、単行本『JA114 中村拓志 & NAP』などがあります。テレビや国際メディアの出演も多数で、設計思想やプロジェクトの背景を自ら発信しています。
システムブレーン

 

 

6. なぜ彼の建築が響くのか(私見・まとめ)

場と人をつなぐ繊細さ:単なる造形の美しさだけでなく、使い手の身体や行為に寄り添う設計が、人の記憶や感情に触れる。
地域と素材への敬意:その土地の素材や暮らしを軽やかに取り込み、地域性を損なわずに現代の文脈へ更新する力。
物語性のある空間構成:チャペルの「上る道」に見られるように、建築が時間(儀礼)を編むことで強い体験を生む。

これらは単に見た目の印象ではなく、細やかな観察と技術(構造・施工)を伴って初めて成立する点が重要です。
Hiroshi Nakamura & NAP|中村拓志&NAP建築設計事務所

 

 

参考・主要出典(抜粋)

Hiroshi Nakamura & NAP(公式サイト)/プロジェクト一覧・About.
Hiroshi Nakamura & NAP|中村拓志&NAP建築設計事務所
Wikipedia(中村拓志)/受賞・作品一覧(概説)。
ウィキペディア
ArchDaily, Shinkenchiku(Ribbon Chapel, Tokyu Plaza 等プロジェクト記事)。
ArchDaily

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