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「窓を設計する」── 役割・事例・実践テクニック

「窓を設計する」── 役割・事例・実践テクニック

窓は「採光」「通風」「視線の受け渡し」「日射・熱のコントロール」「景観との対話」など、家や建築の性能と表情を同時に決める重要な要素です。本記事では、設計上の考え方を3つの具体事例(伝統的和窓/水平連続窓/ルーバー/コーナー窓)を挙げながら、実務で使えるポイントを紹介します。

 

 

目的を明確にする(設計の出発点)

窓設計はまず「何を優先するか」を決めること。たとえば
●明るさ(均等な自然光を得たい)
●眺望(風景を切り取りたい)
●日射制御(夏の過熱を避けたい)
●プライバシー(視線を遮りたい)
これらを優先順位付けしてから、サイズ・位置・開閉方式・外付け要素(ひさし・ルーバー)を選びます。ブリーズソレイユ(ルーバー等)は日射制御に特化した手法として広く使われています。

 

 

 

1. 障子(和窓) — 光を柔らかく、内外を結ぶ

伝統的な障子は和室において、強い日差しを拡散しやわらかい光を室内に取り込む装置です。紙の拡散性により直接的なまぶしさを抑え、季節や時間で表情を変える光環境を作れます。さらに引き違いや引込みの形式は、開口の調整や通風量のコントロールにも寄与します。伝統の技法を現代的な複層ガラスやフィルムと組み合わせると、省エネと快適性を両立できます。


実務ポイント
●南面の大開口には透過率の低い障子様仕上げを使って直射を拡散。
●可動式の二重障子(内側ガラス+外側障子)で断熱と調光を両立。
●障子枠の細さと組子パターンで視線の抜け感を調整する。

 

 

 

2. 水平連続窓(リボンウィンドウ) — 均一な光とパノラマ

ル・コルビュジエが提唱した「水平連続窓(リボン・ウィンドウ)」は、内部に均等な光を取り込み、視線を横長の帯状に広げることで風景との連続性を作ります。構造と外皮を分離することで大きな水平開口が可能になり、特に整形で広い眺望を活かしたい住宅や公共建築で採用されます。代表例としてサヴォア邸は、水平連続窓を使って採光と眺望を巧みに確保しています。


実務ポイント
●窓下の壁の高さ(窓台高)を決めると視線の取り込み量と家具配置が定まる。
●ガラス面積が増えるほど日射熱取得も増えるため、ガラス性能(Low-E、複層)と外付け日除けの併用を検討。
●連続窓は熱橋や結露対策を意識してディテールを設計する。

 

 

 

3. ブリーズ・ソレイユ(ルーバー)/コーナー窓 — 日射制御と視界の拡張

外付けルーバー(ブリーズ・ソレイユ)は、夏の高い太陽を遮り冬の低い太陽は取り入れるように角度や奥行きを設計することで快適性を高めます。また格子状やパンチングなどのパターンでプライバシーと採光のバランスをとることも可能です。
コーナー窓は角部を透明化して視界を広げ、室内の開放感を強めますが、詳細な構造(サッシのコーナー納まり、断熱)や目隠しの計画が重要になります。

 

実務ポイント
●ルーバーのピッチとオフセットは緯度・方位に合わせて日影計算で決定。
●可動式ルーバーは季節で調整できるが、メンテナンス性とコストを考慮。
●コーナー窓は構造上の納まり(柱とサッシの関係)と開放時の風速を考慮した換気計画を併せて検討する。

 

 

 

4. 細部(ディテール)で差がつく設計チェックリスト

1. ガラス選定:日射透過率(SHGC)、断熱(U値)、可視光透過率のバランスを確認。
2.
サッシ・フレーム:熱貫流の低い断熱サッシ、スリムなプロファイルのメリット/デメリットを評価。
3. 開閉方式:換気が必要な場所は縦すべり出しや上げ下げに。家具配置やバリアフリーを考慮。
4. 外部要素:ひさし・庇・植栽・庇(軒)・ルーバーの組合せで日射熱と眩しさをコントロール。
5. 防犯・防音:都市部では防犯ガラスや防音サッシも組み合わせる。
※設計時は、方位図・日影図・熱負荷計算・風向を必ず検討してください

 

 

5. まとめ — 窓は「性能」と「詩」を同時にデザインする

窓は単なる開口ではありません。光と風をコントロールし、住まい手の行為と風景をつなぐ「場」をつくります。
伝統的な障子のように光の質を設計することも、コルビュジエのように水平連続窓で視界を設計することも、ルーバーで熱を制御することも、目的と場所に応じた選択です。
まずは求める「光」「風」「視線」「熱」の優先順位を整理して、細部(ガラス・サッシ・庇)で詰めることが成功の鍵です。

 

出典
参考事例としての素敵な画像を使用させて頂きました。感謝です。NGの場合、ご連絡いただければ早急に対応いたします。

 

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